星組トップスター・礼真琴が野心に燃える青年を演じた「Le Rouge et le Noir ~赤と黒~」

礼真琴
礼真琴

D'après l'œuvre de Stendhal «Le Rouge et le Noir, l'Opéra Rock» Produced by Sam Smadja - SB Productions International Licensing & Booking, G.L.O, Guillaume Lagorce ©宝塚歌劇団  ©宝塚クリエイティブアーツ

本作においても野心に燃えるジュリアン・ソレルを熱く繊細に演じてみせ、持ち前の歌唱力で心に秘めたエネルギーを爆発させる。

レナール氏の貞淑な妻、そして子どもたちの良き母親であろうとしながらも、ジュリアンとの道ならぬ恋に溺れていくルイーズ・ド・レナール(有沙瞳)、大貴族のお嬢様としての生き方に飽き足らず、ジュリアンとの恋の駆け引きにのめり込んでいくマチルド(詩ちづる)。二人のヒロインが好対照を見せる。

身分格差にもがきながら生きる人々の姿に鋭く焦点を当てているところも、本作の特色だろう。成り上がりのブルジョアとして互いをライバル視する、ムッシュー・ド・レナール(紫門ゆりや)とヴァルノ夫妻(ひろ香祐・小桜ほのか)の振る舞いは滑稽だが切なくもある。2幕では慇懃無礼な貴族社会が描かれ、ジュリアンは最期に「下層階級に生まれたこと」が罪であると言い切る。こうした状況を俯瞰するのが、狂言回し役を務める歌手のジェロニモ(暁千星)だ。
 
その意味で、この作品はジュリアンとルイーズ、マチルドとの愛の物語であると同時に、さまざまな身分・階層の元で生きる人々の群像劇でもある。

そこに歌の力が効いてくる。主要な登場人物にソロ曲があり、それぞれの立場での心情を歌で聴かせる。たとえば、レナールやヴァルノはブルジョアとして生きる苦労、地位や財産への執着を歌い上げ、ラ・モール侯爵(英真なおき)は娘マチルドの将来を案じる父の思いをしみじみ歌う。アップテンポで激しい音楽に感情を揺さぶられると、やはりセリフ以上に伝わってくるものがある。

まるで疾走するかのようなスピーディな展開も小気味良い。フレンチロックミュージカルの醍醐味を堪能したいし、タイトルどおり「赤」と「黒」でデザインされた斬新な衣装を着こなす礼真琴の姿にも注目の作品だ。

文=中本千晶

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放送情報【スカパー!】

Le Rouge et le Noir ~赤と黒~ ('23年星組・シアター・ドラマシティ)
放送日時:5月5日(日)21:00~ ほか
放送チャンネル:TAKARAZUKA SKY STAGE
※放送スケジュールは変更になる場合があります

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